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弊紙アメ★ドリでは毎月「暮らしの法律Q&A」という連載を
シンデル法律事務所で提供しています。

Q.
永住権と市民権、国籍はそれぞれどう違うのですか。
日本人が末永くアメリカで暮らし、働き、生活していこうと考えた時、どの権利を
取得するのが良いのでしょうか。


A.
アメリカにおいて一定期間以上、外国人が合法的に滞在し、就労または就学するためにはビザが必要です。

そのビザは大きく分けると非移民ビザそして移民ビザに分かれます。

非移民ビザとは一時的にアメリカにおいて就労または就学など一定の目的を基に発行されるビザで、ビザの種類に応じ一定の滞在期限が設けられます。

その期限はビザによって違い、中には半永久的に延長できるビザもあります。ただ移民ビザに比べて、その滞在期限が短く、長期滞在に際しては延長申請の頻度は多くなり、転職の際もその都度ビザ申請をしなければなりません。

一方、ここで言う移民ビザが永住権に該当します。

永住権取得にあたっては、家族、雇用、抽選等を通しての申請が可能で、一旦取得すれば、非移民ビザにあるような制約が大きく改善されます。

一部条件付きのものを除き、永住権は10年間有効で、その間の転職もその都度申請が必要なく自由度が高まります。

一方、アメリカ国内外での収入に対するタックスの問題、そしてアメリカを一時的に離れる場合、非移民ビザにはない点を考慮しなければなりません。例えば永住権保持者が長期アメリカを離れる場合、再入国許可書を申請する必要があります。

再入国まで6ヶ月未満であれば大きな問題は特に発生しませんが、続けて6ヶ月以上アメリカを離れることがないにしても1年のうち殆どアメリカに滞在することがない場合や、連続で半年また1年以上離れる場合はこの再入国許可書が永住権維持には必要となります。これは通常2年間有効で、仕事や家族のことが理由になる場合が多く、特別な事情が続く限り3年目以降の申請も可能ですが、年数を重ねるにつけ、審査基準は難しくなるでしょう。

このように永住権保持者としての基本的な利点、不利点を簡単に紹介しましたが、永住権保持者となる上では、その永住者としての意思が問われる形となります。

一方、アメリカ市民権についても利点、不利点があります。また申請についても幾つかの条件を満たさなければなりません。申請上の主な条件は次の通りです。

*市民権を申請する時点から遡った過去5年間、永住権を継続的に保持していなければならない(但し結婚ベースの場合は過去3年間)

*同じく過去5年間のうち、最低2年半は実際アメリカに居なければならない(結婚ベースの場合は過去3年間のうち最低1年半)

*申請にあたり申請者は移民局管轄地区に最低3ヶ月居住していなければならない

*申請が終わるまで永住権を持続的に保持していなければならない

*秩序と道徳を弁え、尚且つ重罪を犯していない

*アメリカに対して忠誠を誓う


などです。ところでアメリカ市民権を得ることでどのような権利を受けることができるのでしょうか。永住権と比較した場合、次のような例があげられます。



1. 選挙権を得る

2. 職業安定所での求職アシスタントを得られる (永住権でも可能)

3. 補助的年金や生活保障金など、福祉に関して制限が無い

4. アメリカ国外にいても政府からの援助を受ける事が出来る

5. 他国を自由に往復、国によってビザが無しでも最長3ヶ月の滞在が可能になる

6. アメリカ市民権には永住権や非移民ビザと違い期限が無く、失わない

7. 罪を犯しても国外追放にはならない

8. 遺産相続をはじめ、あらゆる面での税金が安い(全く無い場合もある)

9. 連邦政府関係の仕事に就ける

10. 自分の配偶者と子供のみならず、親兄弟の永住権申請をサポートする事が出来る



対照的に、これら権利を得るという事は別の権利を失う事を意味します。一定年齢以上の二重国籍を認めていない日本を例に挙げた場合、不利点は次のようなものがあげられます。



1. 日本国籍を放棄する(日本のパスポートも破棄する)

2. 国民年金を65歳まで納めていない限り、年金が支給されない

3. 18歳から25歳まで米国にて永住権保持者で滞在していた場合は、政府の徴兵に応じなければならない

4. 日本で長期の滞在をする場合、滞在許可を申請・取得する必要がある(日本国籍の再取得についても同様に申請を行わなければならない)

5. 必要に応じて法廷で陪審員を務めなければならない



以上です。日本国は一定年齢以上の二重国籍を認めていないため、市民権取得後の日本国籍の扱いにつきましては対応が必要となります。

弊社は日本の国籍法を専門に扱ってはおりませんので、二重国籍の問題につきましての説明は割愛させていただきました。

アメリカで末永く暮らす場合、御自身がどのような権利を重要視するのか、また自分がどのような状況下にあるのか充分顧慮下さい。

実際申請をするにあたり注意点・盲点は多くあります。

これら条件・状況の詳細については一度専門家に相談するのも良いかもしれません。

(解説 吉窪智洋 シンデル法律事務所)

by amedorinewyork | 2007-01-12 00:20 | NY 情報

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