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ニューヨーカーの条件 
第31回 「俺はちっとも羨ましくない」

先日、爆笑問題の太田光氏とお会いする機会があった。
お笑いの枠を超えて、政治や社会問題に関して鋭い洞察力を持った人だった。

そんな太田氏の番組を見ていたら、日本の新しい形の「大金持ち」としてよい意味でも悪い意味
でも騒がれた、元ライブドア社長の堀江貴文氏が出演していた。
司会者であった太田氏が放った言葉が印象的だった。

元々の堀江氏の本当の価値とは、「誰でも少し頭を使って工夫をすれば、若くてものし上れるんだ」
と言うものだったはずと太田氏は言う。しかし若者たちの視点はそことはズレていた。

彼の「金がすべて」的な発言に共鳴し、お金に重点を置き、ビルの展望台のような所に住み、
女性をはべらせて暮らす生活に憧れ始めた。

太田氏はそんなものを羨ましいと思う世間の価値観に強い違和感を覚えたと言う。
「俺はそんな生活ちっとも羨ましくなかった。経済の頂点があれだったら虚しくないか?
あれが成功だって言うんなら、成功なんかしなくていいもいいよ。そうじゃなくて、
あれを羨ましがらない価値観を見つけるべきなんじゃないか?」
独特の太田節でバッサリと切った。

堀江氏の若者への影響を私自身もニューヨークで目の当たりにした。
あの頃「ホリエモン崇拝」の若者が何人も野望を抱いてニューヨークへやって来た。

堀江氏に感化され、私の会社に入社したいと言う若者もいた。
私は彼らに「あんな事が本当の幸せではない」と言いたかった。
しかし当時の日本は「金を持っている人が勝ち組」という風潮であり、
実際ライブドア事件の直前まで堀江氏は成功し続けているように見えていた。

その中で、そんなことを言っても「負け犬の遠吠え」のように思われるだけだろうと思い、
言えなかったのを覚えている。
その時の疑問とジレンマを太田氏は代弁してくれたような気がした。

実は私にも以前、堀江氏と似た様な経験がある。
九十年代後半ネットバブルで数億単位の金を集め、俄かミリオネアに酔いしれたことがあった。
だから若者たちの気持ちが分からなくもない。

しかし堀江氏に感化されてやってくる若者達には、私も一様の違和感を持った。
猫も杓子もネットビジネスをすれば金持ちになれるという風潮。

確かに自分で何かをやろうと考え、それを切り開こうとする心意気は素晴らしい。
しかしその多くはあまりにも安易だった。

彼らの共通する目標は「社長になる」と言うこと。
本来、起業はビジネスの手段と過程でしかないはずなのに、それが目的になってしまっている。
起業すること事態は簡単だ。

しかしそれを維持し、社員とその家族まで面倒をみると言うことは並大抵の事ではない。
そして社会に対して責任を取る必要がある。

私は、ベンチャービジネスとは新しい価値を創造する事によって、最終的には社会に
貢献ができることだと考えている。私が起業した九〇年代半ば、ベンチャー起業家はまだ蔑まれていた。
胡散臭いという目で見られていた。そういう偏見を跳ね飛ばし、自分がやる事に自信を持つためには、
い志と信念が必要だった。
そして成功するまでやり続ける覚悟が必要だった。
また、その結果大金が手に入ったとしても、大金を所有する者の品格と使命を自覚せねばならない。

堀江氏は一連の逮捕劇のあと、今何をしているのか?という太田氏の質問に、
「大体は家にいて、適当に、ゴルフやったりとか…」と答えていた。彼は大金を手にしても
人生の楽しみ方を知らないのだろうか。たとえ運よく大金を手にしたとしても、ゴルフや
高級マンションぐらいしか使い道が分からない人生は寂しい。自分のために贅沢三昧するだけ。

ニューヨーカーから言わせれば「エセ金持ち」の烙印を押されてしまうだろう。

初出:月刊「アメリカン★ドリーム」2010年6月号

by amedorinewyork | 2010-05-20 22:51 | ニューヨーカーの条件

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