ニューヨーカーの条件 第28回 ステージ別に見る 日本人ニューヨーカー
2010年 03月 05日
第28回 ステージ別に見る 日本人ニューヨーカー
「NYにいる日本人は変わっている」とNYに訪れたばかりの日本人によく言われる。
確かに在NY日本人には特有の個性的な人が多い。
今回はNYに住む様々な人々の状況をステージ別に分析してみたい。
ステージⅠ
やる気満々の段階
NYには世界中から夢追人が集まってくる。概してやる気と希望にあふれ、
恐いもの知らず。コネもなく気合と根性だけで乗り切るような勢いを持つ。
例えばダンサーや俳優志望者はオーディションを受けまくる。
芸術関係でキャリアを積みたい者は、大物の門を叩く。
自分はプロだと名乗り、無理に仕事を取りながら経験を積む者もいる。
人生の一大決心をして、自分の目標と夢を叶えるためにやってくる。
その勢いはあっぱれだ。辛い環境を耐え抜いて強くなり、
よい経験をして運よく次のステージに進む者もいる。
自分なりに滞在期間を設定して、その間に大きな経験を積み人生に
役立てる者もいる。エネルギーに溢れたこの段階はNYの強みだ。
しかしここの段階には危険な二面性がある。
しっかりと目標や期間を設定して自己管理できる人はいいが、
そうでない人にとってこの勢いは諸刃の刃となる。
夢を諦めきれずにダラダラとNYに居続けてしまう人は多い。
NYにいるだけで夢を達成したと思ってしまう可能性がある。
またNYにはそう思わせるような魔力があるのも確かだ。
ステージⅡ
安定・反省の段階
ステージⅠで運よく就職先を得て就労ビザを取得するか、
自分の能力を生かしてアーティストビザを取得、
個人で会社を設立しビザを取った、ほんの一握りの者がステージⅡに進む。
ここでは就労が合法的にできるため基本的な資金は調達でき、
贅沢はできないが生活は安定する。
精神面ではステージⅠのやる気時代を経て少々疲れ気味。
ビザ取得や労働環境など、過酷な経験を経て、現実を見てきている人が多いため、
やる気だけではどうにもならないことを悟り始める。
ビザが取れても自分の夢や希望通りのレールに乗っている者ばかりではなく、
少し今までのやり方を反省し他の方向を模索している者もいる。
この段階は日本人ニューヨーカーが必ず通る、ポジティブの反作用だろう。
少々無理をして、自分の性格に合わないことまでやってきた事が果たして正しいのだろうか、
ビザの為の奴隷労働になっていないかと疑問を持つ。
まわりを蹴落としてでものし上がろうとしていた事を反省し、
そういう自分自身にも疲れてくる時期。
ステージⅢ
自分は他の人とは違うと思い込む段階
ステージⅡで何とか自分の居場所を確立した者、運よく自分の設立した会社が軌道に乗り、
潤い始めた者が到達するのがステージⅢ。国際結婚という手もある。
この頃になると今までの反動で、ここまでNYで生き抜いた自分はすごい、
他の凡人とは違うと自信過剰になる。
バリバリ仕事をし、生き馬の目を抜くかのごとく闘争心むき出し、
損得勘定のはっきりした姿勢が顕著。
得てして彼らは、一般的な人から見るとイタさを感じるくらいのバイタリティーと
個性を持っている。
とても強烈なパワーを放っているので、この段階を強いニューヨーカーの
イメージとして捉えられることも多い。
ステージⅣ
人生を見つめなおす段階
激しいステージⅢの段階の途中で、大きな失敗や挫折を経験したり、
精神的に追い詰められて、ふと自分の生活を見つめなおす瞬間がやってくる。
遠い故郷を離れた場所でバリバリと働き、人を蹴落とし、騙されないように気を
張ってきた生き方に疲れ、疑問を持ち始める。
周りの人々は実に余裕を持って楽しそうに日々を送っているではないか…それに比べて
なぜ自分はこんなに切羽詰っているのか?という疑問が生まれる。
それが始まればステージⅣに昇格だ。
周りのベテランニューヨーカー達の生活に習って人生を楽しみだす。
利潤の追求より、自分の生活を丁寧に楽しむことに目覚める。仕事もその一部分となる。
周囲の人間は競争相手ではなく、様々なヒントをくれるユニークな異文化交流ができる仲間となる。
今までの苦労や経験から、余裕を持って後輩たちに助言を与え、手を差し伸べ始める。
仕事に直結しない趣味を楽しみ、NYの街自体を楽しむ事ができるようになる。
このステージⅣはニューヨーカーの真の強さを蓄え始める時期。
人に優しく、今を存分に楽しむ。
ステージⅤ
最強のニューヨーカー
ステージⅣで人生を見つめなおしたニューヨーカーの中から、
大きな成功を収める人物も出てくる。世界最先端の街で成功を納めた彼らは、
各国に別荘を持ち、世界中を飛び回る。
この段階になるとあまりニューヨーカーだという事にも固執しなくなる。
誰にでもどんな人種にでも分け隔てなく接し、行動と発言に余裕がある。
英語も使い分け、いい友達を多く持つ。ボランティアやコミュニティー活動にも熱心で、
環境や芸術、教育のために多額の寄付を惜しまない。彼らはただの大金持ちではなく、
NY特有の包容力とパワーを持っている。
このように、日本人ニューヨーカーと言っても色々な人が存在し、
様々な段階でそれぞれの考え方を持っている。
ニューヨーカーのやる気の裏には意外なもろさや、
勘違いで攻撃的、周囲に虚勢ばかり張ってしまう時期もある。
こんな一面が「変わっている」と言われる所以だろうか。
そしてここは叶えられる夢の数より、明らかに多い「敗れた夢が浮遊する街」でもある。
失敗し、傷つき、時には激しい疎外感と孤独感にさいなまれ、
次第に自制や謙虚な心を育てていく。
その段階を経て自分のライフスタイルを見直し、意識を変え、
人生を楽しむことと人との関わりの大切さを再認識させられる
不思議な力を持った街でもある。
by amedorinewyork | 2010-03-05 13:11 | ニューヨーカーの条件