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ニューヨーカーの条件 
第27回 追いつかせてくれない先輩


私がアメリカに行こうと決心した頃、たまたま知人からアメリカ帰りの人を紹介された。
その人は日本の高校卒業後、渡米。アメリカの大学、そして大学院を卒業したという。
大学院に在学中は日本大使館でアルバイトをしながら学費を稼いでいた。
大学院(国際政治学科)を卒業後、大手外資系企業に就職を決めて日本に帰国してきた。

当時の私にはまぶしいくらいの彼の経歴と頑張りだった。
まだ何も始めていない私は、ただただ憧れるばかりだった。
私もアメリカに行って彼のようになりたいと強く思った。

その後も、その先輩とは度々連絡をとりあい叱咤激励をしてもらっていた。
アメリカに慣れない頃は、様々なことに迷い苦しんでいたのを随分と助けてもらっていた。

しかし次第にアメリカ生活に慣れるにつれて色々と自分できるようになっていった。
様々な経験が自分に判断力と行動力、そして自信を培い、自分なりのアメリカでの成果を
あげていけるようになった。
それに反比例して、次第に彼に連絡して相談する機会も減っていった。

大学を無事に卒業し、ニューヨークで出版社に就職。1年後に独立。
あの先輩に出会ってから10年が過ぎていた。
ベンチャービジネスで成功し、意気揚々と一時帰国をしていた際に私は彼と再会する。
その時の自分は、当然彼を追い越せたかのように感じていた。

しかし先輩はその時、大手外資系金融企業の人事部長として随分とキャリアを積んでいた。
その間に、日本の大学院(ビジネススクール)で今度は経営修士号(MBA)を取得していた。
そしてなんと、人事という専門分野で自分の才能を見出され、
ジュネーブの国連難民高等弁務官(UNHCR)の人事部長として招かれていたのだ。
給料は半分になったというが、彼の夢であった国際政治舞台での活躍を求めて何の躊躇も無く
颯爽と転職していった。なんともカッコいい。10年経ってまた新たな憧れの念を抱かされてしまった。

彼に限らず、私の周りにはこういった常に先を行くいい先輩たちが世界中にいる。
皆、忙しい方達だが、時折積極的に会ってもらっている。
彼らは共通して常に努力を怠らず、今の自分に決して安住することがない。先を見ながら、
自己実現、夢に向かって突き進んでいる。生き方、考え方、ライフスタイルなど本当に参考になる。

そして、追いついたと思った時には次の姿に変えている。そんな先輩たちの背中をいつも見ている。
しかし、最近思うことは、そうなりたいと追いかけているのではなく、いつか超えてやろうと思っ
ている頃、自分は大きく飛躍するのではないだろうか。
先輩たちは追いついたと思ったときにはもう一歩先にいっている。
でも追い越すつもりがなければ、追いつくことなどできない。そのぐらいの気概で生きていこう。
きっと先輩たちもそれを望んでいるだろう。

そんな先輩たちの背中を見ながら、ふと私は自分の後輩たちにどう思われているのだろうと考える。
自分も偉そうに沢山の若い人達と話をしたり、必要とあらば手を差し伸べたりしてきたが、
そんな自分の背中は果たしてはあの先輩たちのように頼もしいのだろうか。
私も、常に夢を持って新しいことに挑戦、努力し、後輩に追い抜かれないように頑張りたい。

by amedorinewyork | 2010-02-03 02:38 | ニューヨーカーの条件

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