バックパック世界旅行記~中米編 1
2009年 10月 31日
バックパック世界旅行記~中米編
将来何か大きな事をしたいが、何をしていいのか悩んでいる二二歳の青年が世界を旅する。幼少期から家庭環境に恵まれず、学校では落ちこぼれの烙印を押された主人公が一念発起。アメリカ留学を実現。世間を見返してやりたい、自分の存在意義を確かめたい…内に秘めた強烈な思いに突き動かされ、まずは世界を見るために様々な国をバックパック一つで放浪する。
1、隅田川
「あいつらが支配してんだ」
久しぶりに帰郷し地元の幼馴染達との飲み会。その言葉を聞いた瞬間、私はぎょっとした。浩二は最近ヤバいらしいと仲間内で噂をしていたところだった。遅れてやってきて、皆と他愛のない話で盛り上がっていたのに、急に立ち上がり空を睨んでの一言。一瞬その場が凍りついた。
浩二は数年前に父親から家業を次いだ。最近それがうまくいっていないらしく人生にも行き詰っていた。酒浸りの毎日、おかしな言動が多くドラックにも手を出しているんじゃないかと地元のもっぱらの噂だった。そんな奴の奇行は慣れっこだが、私を含め皆が凍りついたのには訳がある。「あいつら」が何をさすのか。恐らくそこに居たもののすべてが一瞬で理解したからだろう。浩二のうつろな眼差しの先にあるものは、真っ赤な夕日を背景にそびえたつ高速道路の黒い影。その向うにあるものは、隅田川。
「いつか隅田川を越えてやる」そんな野望は、私が幼心に勝手に思い描いていた戯言だと思っていた。私は東京下町、葛飾、労働者の町に生まれた。その下町と山の手を分けているのが隅田川。隅田川の向うに住む人間が日本を支配していると、子供の頃、何故か真剣に思っていた。隅田川の向うとは、千代田区、中央区、港区がある都心の裕福な人間が住む地域。そして渋谷、新宿、世田谷のような山の手もさす。その隅田川を越えてやりたいというのが、下町の貧乏な家庭に生まれた私の、小さくも大きい野望だった。いつも自転車を乗り回し、隅田川を越えないと都会に行けなかった。東京の下町、ゴミ屋の息子に生まれたということがまるで貧乏の象徴みたいな気がして、嫌で仕方がなかった。
浩二の一言で、東京の下町に住むガキどもが一様にそんな思いを秘めていたらしいことが明らかになってしまった。すっかり大人になり今では自分の事業も成功した。自由に使えるお金と、どこへでも行ける自由。そんなものを当たり前のように享受した自分の中に、ギクリと突き刺さる記憶だった。
続く

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by amedorinewyork | 2009-10-31 10:50 | バックパック世界旅行記