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連載 「ニューヨーカーの条件」 5

 幸運を引き寄せる圧倒的な努力

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私の自宅近くに、2年以内にレストランが3回潰れた場所がある。
そこに06年11月、LAを拠点としたおまかせ寿司専門「佐々舟」
がオープンした。

いわくつきのこの場所に、アメリカ人にはまだ馴染みの薄いおま
かせ専門の寿司屋をオープンするなんて無謀だと、誰もが思って
いた。

LAの店から暖簾わけしたオーナーシェフの高橋賢二さんは私の
親友の友人であり、昨年の我が家の新年会にも参加して頂いた。

私に出会う直前に、オープンしてまもない店が、ニューヨークタ
イムスのレビューに大々的に紹介されたと言う。それまでは一日
数人の来店客だったが、掲載後は予約の電話が鳴り止まなかった
と嬉しそうに話していた。

こんな競争の激しいNYで、なんと運のよい人だと思った。

それから一年後、今年もまた新年会で再会した。少し疲れている
ようだったが覇気があり、どこか安堵感と自信が感じられた。

新年の挨拶のあと、近況を訪ねた。「最近少し疲れました。週6
日、4時半から仕入れに行って11時半まで働いています」という。

私は耳を疑った。4時半とは午前?午後?

高橋さんはお店をオープンして以来、毎朝4時半に自ら仕入れに
行き、夜11時半まで働いているという。そしてLAに住む家族と
は離れてお店の上のアパートに住んでいるという。休みは日曜日
のみ。体が悲鳴をあげるのも当然だ。

LAの「佐々舟」で寿司職人として4年間修行を積み、LA
からNYのこの物件を決め、あとはサインを待つだけの状況でNYに
移住してきた。

しかし、ここはNY。一筋縄で交渉ごとが進むはずが無い。
すったもんだがあり、交渉に4ヶ月も時間を費やされ、弁護士費用な
どもかさみ、手持ち資金はマイナスからのスタートとなってしま
った。

お店をオープンしてからは、お客さんに喜んでもらいたいと、
自ら魚を厳選して、100%お任せのお店を貫く。てんぷらな
どを提供する店もあるが、高橋さんはあくまでも寿司とさし
みだけで勝負。だから飽きられてしまわないように努力する。

お店に来てもらえないというのはお店を否定されているとい
う意味だ。暖簾わけをしてもらった以上、それでは師匠や弟弟子達に
申し訳ない。

NYの厳しい競争下では、例えおいしくても、それだけで人
は集まらない。「絶対的な努力をしないと勝てない」と高橋さんは語
気を強める。

朝の仕入れを行かなければ楽になる。しかし、それをやった
ら他のお店と同じなってしまう。仕入れをやめるくらいなら1日休む
という。

生き馬の目を抜くNYで、何百店あるレストランの中で、勝つた
めにここまで努力しないといけないのかとつくづく思った。ここ
で生き残っていく店とそうでない店の違いを痛感した。

彼を見て思う。「本当に自分は努力しているのだろうか」

本当に勝つためには圧倒的な努力が必要なのだと改めて思っ
た。
この圧倒的な努力があってこそ、幸運を引き付けるのだと。
人それぞれ自分なりに努力しているとは思う。しかし客観的に自
分を見つめ、本当に自分に偽りがなく最後の最後まで努力し
ているのか―。

それを知るのは自分のみであり、悔いなく生きる条件である。

勝利の女神はこういう努力者に微笑むのだろう。

過去の「ニューヨーカーの条件」はこちらから
http://amedori.exblog.jp/i14/


板越ジョージ (起業家・作家)
東京・葛飾生まれ。在米20年。元ジャニーズJr.。高校卒業後、
バイク便で留学費を稼ぎ、単身渡米。サウスカロライナ大学国際
政治学部卒業。在学中にバックパックを背負い世界35カ国を放浪。
イスラエル、ロシア、チェコ、グアテマラにも留学。95年に広告
代理店業イタショーアメリカを創業。7つの会社を経営し、株式
公開直前までいったが、9・11の影響で沈没。多額の借金を背
負った。
現在は、アメリカン★ドリームパブリッシングなど3つの会社を
NYと東京で経営。
著書に「リベンジ人生道場」等。「グラウンド・ゼロ」はベスト
セラーに。

by amedorinewyork | 2008-02-29 21:34 | ニューヨーカーの条件

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